ジャズピアノの王道を堪能する夜
2025年10月14日、ビルボード大阪で行われた Kenny Barron Trio の公演に行ってきました。
ピアノのケニー・バロン、ベースのキタガワ・キヨシ、ドラムのサヴァンナ・ハリスによるトリオ。
「これぞジャズピアノ」という王道のスタイルであり、一音一音に深みとセンスが感じられる、まさに名演でした。

会場と雰囲気
会場はビルボード大阪。私は中列あたりの席でしたが、ステージとの距離が近く、ピアノの打鍵やベースの低音、シンバルの余韻までがはっきりと届く音響でした。
会場全体が温かい空気に包まれていて、バロンの一挙手一投足に集中して聴き入る雰囲気。照明も柔らかく、まさに“大人のジャズクラブ”という空間でした
セットリスト(覚えている範囲)
- Canadian Sunset
- Bud-Like
- Cooks Bay
- Encore:Memories of You
※時間が経ってから書いているのでかなり忘れてしまっています・・・
ベースとドラムが離れ、ケニーバロンがソロになる曲もありました。
他に有名なスタンダードもやってたけど出てこない・・・
演奏の印象とハイライト
オープニングの “Canadian Sunset” から、まさにジャズピアノの王道。穏やかに始まりながらも、トリオ全体がしなやかにスウィングし、1曲目から観客の心をつかんでいました。
右手のメロディには、ほんの少し“アウト”したフレーズやオルタード的な響きも散りばめられていて、奇をてらわないのに「おっ」と思わせる瞬間がいくつもありました。ジャズ好きが「これこれ!」と思うような絶妙なさじ加減でした。
“Bud-Like” はその名の通り、バド・パウエルを思わせるビバップ的なナンバー。右手のラインの切れ味とタイム感の良さが際立ち、会場の空気が一気に引き締まる瞬間がありました。
“Cooks Bay” では、リリカルで聴いていて本当に気持ちよく、バロンの音楽性の広さを感じました。
アンコールの“Memories of You” は、ケニーバロンがソロで出てきました。
ルバートからインテンポへと緩やかに移り変わる、
スロー〜ミディアムの間くらいのテンポで、まるで語りかけるようなピアノ。
1人でもこんなふうに弾けたら楽しいだろうなと思うような、味わい深い演奏でした。
リズムセクションの存在感
ベースのキタガワ・キヨシは、ぶれることなくリフを支え続ける安定感が印象的でした。音の輪郭がはっきりしていて、トリオの屋台骨を見事に担っていました。
https://en.wikipedia.org/wiki/Kiyoshi_Kitagawa
一方ドラムの サヴァンナ・ハリス は若い女性で、繊細さと大胆さを併せ持つプレイ
静かな場面ではシンバルの余韻を丁寧に響かせ、盛り上がる場面では全身でリズムを刻む姿が本当にかっこよかったです。
ドラム近くの席だったこともあり、動きがしっかり見えて、その一打一打が音楽そのものでした。
https://de.wikipedia.org/wiki/Savannah_Harris
ケニー・バロンのMC
基本的には曲紹介でした。当然英語で話されているので、自分の英語力ではきちんと理解することは難しかったです。
アンコール後のMCでは、「ニューヨークから韓国を経て日本に来たから、ちょっと疲れてるよ」と笑いを誘う一幕もありました。
81歳にして世界中を飛び回り、ライブを続けているとは本当にエネルギッシュな人なんだなと思いました。
LP購入とサイン会のひとコマ
ライブ終了後は、会場でLPを購入してサインをもらいました。事前に店員さんからLPを受け取り、サインの列に並ぶ形式でした。
バロンはにこやかでとても優しく、日本語で「お願いします」と「ありがとう」しか言えなかった自分にも笑顔で応じてくれました。
ちょっとユーモラスなことを言ってくれたのですが、英語が出てこなかったためその場では笑うしかできず…でも、忘れられない思い出になりました。
音の波に揺られる心地よさ
全体を通して、派手なパフォーマンスではなく“音そのもの”で語るライブでした。
奇抜なことはないけど、聴いていて楽しく、深く、心が動く。
トリオの信頼関係と、81歳のケニー・バロンが放つ静かな情熱。
ただ音の波に揺られているだけで幸せを感じられる、そんな夜でした。
購入したLPです。
BudLikeやCooksBayが収録されています。